フィリピンは地理的には東南アジアに属しますが、他の国からは離れており、独自の発展を遂げてきました。特にスペイン・アメリカの植民地になっていたことがフィリピンの文化に大きな影響を与えています。食べ物や宗教の面で他の東南アジアの国と大きく異なります。
食文化にスペインやアメリカの影響は見られますが、植民地以前に確立していたネイティブ食文化も依然として残っています。その中でも最も有名で人々に親しまれている珍味をご紹介いたします。
フィリピンの珍味中の珍味、「バロット」。孵化しかけの鶏の卵を通常のゆで卵のように料理した食べ物です。フィリピン人でも好きな人と嫌いな人に2分されます。好きな人は1度に2個3個食べますが、嫌いな人は見るのも嫌というぐらいです。
バロットのお店は街角に突如開かれます。17時から18時くらいになるとどこからともなくバロットが入った発砲スチロールの箱を持ってきて、小さな椅子やソースなどをセッティングして完了です。人が集まりやすいところ、つまり、街灯の下や交差点、別のお店の隣にバロット屋さんがいることが多いです。
見た目はごくごく普通のゆで卵です。発砲スチロールの中は保温されていて、卵の温かさは保たれています。
このバロット売りは2つの箱を持っており、それぞれに16daysと18daysのバロットが入っています。日にちは生後何日が経過しているかをあらわしており、日が経つにつれて、バロットは「原型」に近づきます。16日モノと18日モノが一般的ですが、20日や22日も稀にあります。22日レベルになりますと、かなり「原型」に近づきます。
バロットを食べるときは路上沿いに用意されている小さな子ども用の椅子に座ったり、立ったまま食べます。
バロットの食べ方はまず卵を持って上下を見て、長くなっている方のてっぺんを身近にある固いもので少し割ります。中には少し空洞があり、バロットのスープがたまっています。まずはそのスープを堪能します。そのままでもいいですが、備え付けの塩やスパイシーなお酢をかけてもおいしいです。全てのスープを飲み干したら、少しずつ割っていきます。
大体割り終えるとこのようになります。
このようになったら、あとは豪快にかぶりつきます。ちなみに、黄色い部分、白い部分、黒い部分で味や食感が異なります。黄色い部分は本来ですと黄身ですが、バロットだと固い食感になります。白い部分は白身で、バロットだとやわらかくクリーミーな味わいです。黒い部分は成りかけのひよこです。この部分は濃厚な味わいです。
私のオススメは塩とお酢を少々たらし、一口で食べることです。バロットは部分によって食感と味が大変異なります。一口で食べることによって、そのすべてが融合し、何とも言えない味を醸し出します。
上の写真のバロットは16日モノです。
こちらは18日モノです。16日モノとくらべると原型をとどめてきております。ちなみに、向いた殻はそのまま下に捨てるので、バロット屋の周辺は卵の殻だらけになります。
バロットは滋養強壮にいいと言われており、疲れている時や体調を崩した後に食べるといいでしょう。肉体労働者や夜勤の人々に人気ですが、単におやつ感覚で小腹がすいた時に食べることも多いです。
皆さんも、フィリピンの町を歩いているときに街灯の下や交差点などで人々がしゃがんで集まっているのを見かけたら是非立ち寄って、フィリピンの食文化であるおいしい珍味を召し上がってみてはいかがでしょうか。
(ヤス)