美しいビーチを有するリゾート地として知られる、フィリピン・セブ島。 しかし、未だに多くの人々が貧しい暮らしをしており、約半数の子どもが義務教育を終えることができません。
途上国としての側面も持つ、フィリピン。NPO法人セブンスピリットの活動に参加し、普段は感じ取る事の難しい側面を垣間みる事ができました。
今回は、いつもと少し違う視点からセブ島をご紹介したいと思います。
NPO法人セブンスピリットは、アンサンブル音楽やチームスポーツを通じて、子ども達が効果的にライフスキルを身に付けられる教育を実践しています。
モデルとなっているのは、1975 年、南米ベネズエラにて始まったオーケストラ教育プロジェクト「エル・システマ」。スラムで生活する貧しい子ども達に無料で楽器を貸し出し、音楽教室を開設することで、非行や暴力、ドラッグなど様々な社会問題から、子どもたちを保護してきたプロジェクトです。
セブンスピリットでは、クラウドファンディングにより作られた音楽スタジオがあります。平日は放課後の午後5時30分から7時30分。土・日は午後3時から5時まで練習が行われているそうです。
音楽スタジオはセブ市パリアン地区にあり、この日も多くのこども達がいました。日本人の私を見ると、だんだんと子供が集まってきて、その場でアンサンブルを開始。
譜面を覗いてみると、音符の上に何やら棒のようなものが書いてあります。筆者は、幼少期から音楽を学んでいるのですが、初めて見た記号。気になって、どんな意味なのか子供に聞いてみました。
すると、「どこで入るかわからないから、カウントを書いてるんだよ」とのこと。アンサンブルは、他の楽器と一緒に演奏するため、自分がどのタイミングで音を出すのか見失うこともあります。楽器初心者であれば、記号や音符の長さがあまりよくわからないこともしばしば。こんな所にも、子供たちに音楽を教える工夫がされていて、驚きました。
小さなアンサンブルの中でも、誰かがリーダーになったり、みんなで演奏する曲を決めたり、拍を取ったり、色々なコミュニケーションが存在します。
「こっちの曲がやりたい!」「私が拍を取りたい!」と色々揉めながらも、演奏が始まったら、とにかく楽しそうにする子供たちを見て、音楽アンサンブルという小さな社会の中で、様々な事を学んでいるんだろうなと感じました。
筆者がセブンスピリットを訪れたのは、日曜日でした。週末は、子供たちみんなでお昼ご飯を食べます。無料で提供されている昼食も、演奏するための楽器も、全て日本からの寄付又は寄付金で用意されているものだそうです。
子供たちは、セブンスピリットが大好きな様子で、セブンスピリットの絵を書いている子もいました。スタジオでは、みんなで練習する時間意外は、子供たちが自由に過ごしています。
午後になると、各楽器のパート練習を行った後に、全員で練習をします。練習前になり、先生が話し始めてもなかなか静まらなかった子供たちに対して、フィリピン人スタッフや日本人スタッフが、しっかり注意をします。
楽器を出しっぱなしにしていたり、人の目を見て話せない子に対しても、その都度、きちんと指導をしていました。集団の中で自分自身がどう振る舞い、どんな役割を果たすべきかを教えているそうです。
その日々の積み重ねにより、スラムで生まれ育ち、満足に教育を受けられない子供たちが、自身の力で課題や困難を乗り越えていく力を育んでいる様子が伝わってきました。
演奏していた曲は、「アナと雪の女王メドレー」「夏祭り」「さくらさくら」など知っている曲が多くありました。
筆者が訪れた日は、ドキュメンタリーやCMでもよく使われている、リベラの「Far Away」という曲を練習していました。大学にて声楽専攻だった筆者は、歌を教える事ができました。楽器経験者の方は、一緒に演奏する事も可能です。
また、セブンスピリットのスタディツアーに申し込むと、イナヤワンのゴミ捨て場も見学する事が出来ます。見学後、ゴミ捨て場のすぐ側で生活している方にインタビューする機会もあり、一人では体験する事の出来ないプログラムが組まれています。
筆者は、たくさん写真を撮ることよりも、子供たちとの触れ合いを楽しみたい!という思いから、あまり写真を撮りませんでした。そのため、わかりずらい部分もありますが、今回の記事では書ききれない程の、子供たちの笑顔や音楽がセブンスピリットにはあり、そして同時に、フィリピンの社会問題の大きさを感じました。
セブンスピリットでは、スタディツアーを実施しており、2500ペソ(現地語学留学生は1500ペソ)で参加が可能です。また、日本からできる支援も様々な種類があります。
ひと味違ったセブでの一日を体験してみたい!という方は、ぜひ訪れてみて下さい。国際協力や貧困など難しいことを考えなくても、子供たちと一緒に、楽しい時間を過ごす事ができるはずです。
また、エキサイトセブでも以前取り上げた関連記事も、是非ご覧下さい。
セブの貧困事情、そして私たちができることとは?
セブで活躍する国際協力団体ってどんなものがあるんだろう?
(AOI)