国民の80%以上がカトリック信者であるフィリピンでは3月から4月に巡ってくる聖週間は大変大切な期間です。
フィリピンカトリックで重要な行事はクリスマス、聖週間、万聖節、フィエスタの4つですが、なかでも聖週間は最も大切な行事といえます。 イースター(復活祭)は春分が過ぎた後の最初の満月後の日曜日と決まっているため、移動祝祭日になっていますが、毎年3月から4月にあたり、フィリピンでは最も暑い時期になります。
今回は、フィリピン人に混ざって聖週間の行事に参加してみましたので、フィリピンにおける聖週間がどのようなものであるかみてみましょう。
今年のイースターは4月20日でした。
20日を含め17日、18日、19日、20日とフィリピンでは4連休になります。ただ、イースター関連の特別な行事はそれ以前より始まっています。
イースターの前の日曜日は枝の主日と呼ばれ、この日から聖週間は始まります。フィリピンの人々はヤシの葉を編んで作った枝を持ち、早朝から 教会に行ってお祈りをします。この行事はキリストのエルサレム入城を記念するものです。
聖週間のメインの日は以下のようになっています。
木曜日=ホーリーサーズデイ(最後の晩餐の日)
金曜日=グッドフライデイ(キリスト処刑の日)
土曜日=ブラックサタデー(喪に服す日)
日曜日=イースターサンデイ(復活祭)
聖週間の間はお肉を食べませんので、野菜や魚が食卓に並びます。人によっては断食に近いこともします。 他にアルコールを絶ったりなど、日常の生活の中で常にしていることを犠牲にすることで祈りを捧げます。
ちなみにキリストが亡くなった日がなぜ「グッド」なのかというと、キリストは人々のすべての罪を背負って死を遂げたことで、人々は罪から解放されたと言われており、「グッド」と呼ばれています。
また、イースターの前の6週間半の期間は4旬節(レント)と呼ばれ、レントの第一日目にあたる灰の水曜日になると敬虔なカトリック信者は教会に行き、司祭に灰で十字架を額にしるしてもらいます。これは悔い改めの印で、十字架は自然に消えるまでそのままにしておきます。
17日の聖木曜日のミサは最後の晩餐のミサとも呼ばれ、特別な儀礼が執り行われます。その夜は明け方まで聖体礼拝が行われ、あちこちでパッションと呼ばれるキリストの受難詩を詠唱する声が聞こえてきます。 教会や町の広場ではプロの劇団員や住民の人々が受難詩に描かれたキリストの生涯を劇で演じたりします。
聖週間のメインイベントはなんといっても聖金曜日です。
キリストが十字架で受難の死を遂げたとされるこの日には教会でキリストの言葉が朗読されます。敬虔なキリスト教徒は感情が入り、涙を流す人・意識を失って倒れてしまう人もいます。 夕方からはキリストの等身大の像を担ぎながらの行列(プロセッション)が行われます。場所によってはキリストの受難を追体験しようと自ら十字架に貼り付けになったり、鞭で体を叩いたりする人もいます。
こうした行為はサクリファイスと呼ばれ、何かを犠牲にする事で感謝の祈りをささげたり、願い事をかなえたりすることが出来ると信じられています。
ゆえに多くの地域で、生活の中で何かを犠牲にしたり、苦痛を伴う様な事をしながら、キリストが十字架を背負って歩いた体験を追体験しようとする行事が行われます。特に、山を登りながら14の十字架に祈っていく行事は有名です。山の道中にはキリストが死を遂げるまでの14のシーンがそれぞれ描かれた14の十字架が設置されており、それらを巡ります。
人々は少しでもキリストの追体験をしようと急な山道を登り、14回お祈りを捧げます。 中にはよりキリストに近づこうと裸足で挑戦する人もいます。
後半の十字架になってくると体は疲れてきますが、心は解き放たれるような開放感に満ちてきます。
聖木曜日から聖金曜日まで、この山の頂上で一夜を明かす人もいるようです。テントや食料を持ち込んで一夜中、祈りを捧げます。 尚、キリストが受難の死を迎えたグッドフライデーからイースターまでは各教会のキリスト像は布で隠されます。 1年の間で唯一キリストのいない日です。
聖土曜日の深夜から朝方にはキリストの復活を祝うミサが行われます。
イースターである聖日曜日はキリストの復活を祝うために家族で集まり、レチョンのようなご馳走を食べます。
キリスト教は、1度死んだとされるキリストが復活したことで信仰の対象になりました。ゆえにイースターはキリスト教の中で最も重要な行事となります。一説によると復活したキリストを500人以上の人々が見たと言われています。
今回、フィリピンの人々と共に聖週間を過ごし、教会でのお祈りや、行列、14十字架に参加して、改めてフィリピンの人々の宗教観を理解することができました。
(ヤス)