セブ島やマクタン島には沢山のレストランがありますが、食事をするのはもちろん観光客の方々だけではありません。こちらに住んでいる現地の方々も同じように、3食、もしくはそれ以上沢山ご飯を食べています。セブでよく見かけるローカルな食といえば豚の丸焼き「レチョン」などがありますが、それと同じぐらいメジャーな食べ物「チキン」を主なメニューとしたレストランの開店をマクタン島で追ってみました。
今回開店までの過程を見てきたのは、マクタン島の空港からタクシーで15分程度のエリア、ビッグフットの近くのマーケット内に店舗を構えることになった「TABZ GOLDEN CHICKEN」です。チキンをメインディッシュとし、シュウマイやフィリピン風のラーメンのような「BATCHOY(バッチョイ)」を扱います。
店舗を開くことにしたのは、この近くに住むレニエルさん。2人の子どもを育てるお父さんです。開店の理由は「投資のため」とのことで、意外と堅実な回答です。「TABZ GOLDEN CHICKEN」が面する道は大通りからマーケットを通り抜けたあたりにあり、24時間人の流れが絶え間ないエリアですが、既に近隣には何店かチキンを取り扱うレストランがあります。
「TABZ GOLDEN CHICKEN」の開店準備は今年に入ってから本格的にスタートしたそうです。家の近くの店舗スペースに空きがあり、今回レストランをオープンすることを決めたとのこと。店舗スペースはだいたい10畳ぐらいです。
日本では個人経営で店舗を構えることになっても内装を作っていく際にどうしても大工さんなどの力を借りることがほとんどですが、レニエルさんの場合は自分の地元のネットワークから資材などを調達し、加工や塗装なども自ら行っています。そのため一般的に初期投資の中で最も大きい支出となる店舗の建築に対して、費用をかなり可能な限り抑えることができているようです。
日本人はフィリピンをどうしても「アバウト」な国であると捉えることが多いと思います。これはフィリピンタイムなどという言葉が知られ、規則的に動くことが苦手であることを比喩しているものですが、彼の場合はこれまでにも家の壊れた部分を自分で直したり、鳥小屋や麻雀台を自分で作ったりと、いわゆる日曜大工を得意としていました。長さや大きさをメジャーなどで正確に測り、手際よく資材をカットしていきます。左側に写っているダリオさんはレニエルさんの友人で、実は2人とも南部ミンダナオ島からやってきています。今回の「TABZ GOLDEN CHICKEN」開店にあたって、ダリオさんもその制作の手伝いをしていました。
レニエルさんは日常的にこういった作業を行っているため、筆者が思ったよりも沢山の道具を持っていました。電動のヤスリやカッターなどもあり、かなり本格的に建築が進んでいきます。
こんな風に建築の最中には道具がたくさん並び、まさに開店前のお店といった様子ですね。その中にフィリピンのビール「レッドホース」も2本並びます。彼らは飲むことも大好きで、大変な作業の合間にビールを飲みながら真剣に、楽しみながら作業をしていたのが印象的でした。日本ではもちろん、飲酒をしながら新しいレストランの建築をすることはないと思います。でもこういったおおらかさはいい意味での「アバウト」なのではないかと、筆者は見ていて感じることがありました。
今回の取材では店舗開店前に3回「TABZ GOLDEN CHICKEN」を訪れましたが、時に作業は深夜まで続き、上の写真のようにレニエルさんが疲れた様子を見せることもしばしば。
それでもしっかりと、彼が事前に宣言した2月8日の朝、「TABZ GOLDEN CHICKEN」はオープンしました!
初日は朝から多くの方が訪れ、レニエルさんによると「思ったよりも忙しくなった」とのこと!1つ20ペソ(約50円)のチキンが人気な他、日本食から発案した、シュウマイの周りにノリを巻いて蒸した「ジャパニーズシュウマイ」8ペソ(約25円)も人気。
他にも肉まんや春巻のようなものがメニューに加わり、初日はちょっとしたフィリピンのデザートもサービスで振る舞われました。
店員さんは基本的に家族で構成されていて、ファミリービジネスとしてスタートしたとのこと。周りにある数点のチキン屋さんとの差別化については、チキン以外のメニューとの組み合わせなどで考えているようです。確かに、先にご紹介したフィリピン風のラーメンのような食べ物「バッチョイ」はこの一帯では食べることができないため、バッチョイを食べて追加でチキンを1つといった注文が増えそうな気がしました。
ちなみに、「TABZ GOLDEN CHICKEN」の「TABZ」は「タブス」と読み、これはレニエルさんの長男タブスくんの名前から取られています。タブスくんは開店当日、店員さんの揃いのTシャツを貰って元気に走り回っていました。
レニエルさんによると、タブスという名前はこちらでは珍しいネーミングだそうで、日本で言う「太郎くん」「一郎くん」のようなよくある名前ではないため、店舗名にしても違和感がないと判断してつけたとのこと。もし第2店舗がオープンした場合には、「自分の次男RJ(レニエル・ジュニア)から取って【RJ GOLDEN CHICKEN】という名前の店舗を作ろうかな?」と上機嫌でした。
日本でもフィリピンでも、どんなビジネスでも始めることは大変ですが、そのプロセスを追っていくと様々な想いや目的がありますね。是非「TABZ GOLDEN CHICKEN」がこれから繁盛していくといいですね!
(Taku)