フィリピンの交通機関は日本でもおなじみのバスや電車などがあるものの、路線が限られていたり、ダイヤがしっかりと組まれていないため日本のように快適に利用することはできず、フィリピンに住む人々は基本的にジプニーやタクシーなどといった交通手段を使用していることが多いのです。
セブ島を含むフィリピンで初めて訪れる外国人は現地の交通機関に慣れていないことがほとんどなのでタクシーを利用する方が多いのですが、土地勘などがない事を悪用してわざわざ大回りのルートを通って運賃をわざと上げたり、追加料金などと称してボッタクリに遭うことがあり、かなり昔から問題になっています。
そこでスマートフォンを利用したUberやGrabなどのライドシェアが登場したことで、ルートや運転手を確認したり、乗る前に運賃を確認できたりと便利だったのですが、Uberは8月15日に運輸省のLTFRB(陸運事業統制委員会)から1ヶ月の営業停止が執行され現在利用できない状況になっています。
Uber(ウーバー)はアメリカで2009年にサービススタートした自動車の配車、ライドシェアアプリです。アメリカでは既にメジャーになっている交通機関の一つ。フィリピンに上陸したのは2015年とつい最近のこと。
スマートフォンから好きな所にピックアップが出来るだけではなく、ドライバーの情報や走行中のマップ、乗車前に運賃が確認できることから通常のタクシーよりは安心できるポイントが多く、非常に便利なツールになっています。そのため、展開中の75カ国では利用者が年々増えてきています。
しかし、タクシーの利用者が減ったり交通機関ではなく一般車が使われていることから、国によってグレーゾーンになっていたり、タクシー協会からの反発があったりと色々問題が起きている所があるのですが、フィリピンでも同様のことが起きたのです。
2014年にGrab TaxiやEasy Taxiのサービスが開始された際、アプリを通して通常のタクシーを配車するというサービスだったので問題は無かったのですが、Uberが2016年に登場してからその事情が少し変わります。
一般車を運転する運転手が自分の空き時間などを利用して他の乗客を乗せる事が出来るUberやGrab Carは他の公共交通機関とはまた違う特殊な位置付けになっているため、法規制について曖昧な部分が多く、しばらくグレーゾーンと言われるなど長いこと討論になっていました。
運輸省(Department of Transportation=DOTr)直属の陸運事業統制委員会(LTFRB)は2015年に出された通達(Memorandum Circular 2015-015)によると、UberやGrabなどいった運輸ネットワーク会社(Transportation Network Company=TNC)はサービスに登録している全ての運転手とその乗用車の交通機関登録証明書(Certificate of Public Convenience= CPC Permit)の登録が必須とされています。
この証明書が用意されていれば問題なくTNCに登録している運転手たちはサービスを利用することが出来るのですが、2016年に入ってから登録が急激に増えたという事と、TNCに登録している車両等の安全性を全て把握できないという観点からTNC向けの交通機関登録証明書の新規発行を2016年の7月に停止しました。
その後、LTFRBへの新規登録はできなくなったものの既に登録済みの車両については継続して利用が出来るようになっていました。しかし、2017年7月時点のLTFRBの発表によるとUberのアクティブドライバー10,054人のうち5,850人が申請を却下され、3,505人が審査中と実に80%以上の運転手が証明書を持っていない状態での運行を行っていると指摘。
後の調査でUberとGrabの合計アクティブドライバーは10万人居ると把握し、そのうちUberが66,000以上になっており、半分以上が証明書を持っていないと判明しました。
これを受けて、LTFRBはUberとGrabそれぞれに500万ペソの罰金と証明書を持たない運転手による運転を停止を2017年7月14日に要求、Uberは4日後の18日に支払いを済ませます。
LTFRBの行っていることは一見正しい事に見えますが、実際は証明書の申請を行っても数ヶ月待たされることも多く、中には6ヶ月以上待っても未だに仮証明書すら発行されていない運転手が多くいると、マガジンサイトRapplerで紹介されていました。
LTFRBへの不満を持つ声は多く、これに反発を行うため署名活動が行われ、122,887人の署名が集まりました。
6月26日のLTFRBによる発令では6月30日以降のTNC内での新規登録は不可となりました。これによってUber、Grabとも新規車両を追加することが出来なくなったのですが、Uberがそれにも関わらず7月23日に3台の認可を行ったことで命令違反になり、8月14日にUberへの1ヶ月営業停止を命令、翌15日に執行されました。
これによりフィリピン国内でのUberの利用が1ヶ月不可能になりました。競合であるGrabはLTFRBの命令にちゃんと従ったため、こちらは営業停止を免れることが出来ました。
そのため、Uberの利用者のほとんどがGrabや他のサービスに移行し、現在Grabなどでは運賃が高騰しています。
Uberはこれを受けて、Uberテクノロジー東南アジア部門のマネージャーであるマイケル・ブラウン氏はLTFRBに誤解への謝罪を行い、営業停止ではなく罰金への変更が行えないかと8月16日に会談が行われました。16日の時点では平行線ではあったものの、再度8月23日に会談が行われているとのこと。
営業停止中のUberドライバーにいたってはUberによる認可と保険証明書の書類を持っているものに限り、GrabやU-Hopといったサービスへの乗り換えを可能にすると発表しています。
既に交通機関の一つとして定着しているUberはドライバーの質やそのサービスの高さからGrabに比べてみても評価が良いので、今回のニュースで打撃を受けている人々は多くいます。
タクシーなどでのトラブルになっている人が多く、FacebookなどではUberへの早期再開、LTFRBへの不満などの意見が多く投稿されていました。
Uberも他の国では色々なトラブルに遭う乗客も言うため、完全に安全とは言えず国がやっている対策は真っ当ではあるものの、ちゃんと審査してある程度数をコントロールするなど、しっかりとしたシステムが出来上がると良いですよね。
今後のフィリピン国内でのライドシェアの動向が気になる所です。
(MIKIO)