フィリピンは日本とは異なる熱帯の気候帯のため、文化や生活が大きく異なります。特にセブは海に囲まれていることもあって、食文化なども日本とは異なる部分が多く見られます。病気に関しても日本にはないものがフィリピンにはあり、特に今デング熱が少し流行っているようです。症状と対策についてご紹介します。
今回筆者がなぜデング熱の症状と対策についてご紹介しようと考えたかというと、残念ながら筆者自身がこの病気にかかってしまったからです。実際に治療した体験を元にして、できるだけ多くの人が感染しないようにと考え、今回この記事でご紹介していきます。現在フィリピンではまにら新聞などでもデング熱の流行が紹介されており、例年よりも多くの感染があるようです。
デング熱はネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどの主に「蚊」によって感染が広がる病気です。そのためフィリピンだけではなく多くの国で感染が確認される伝染病の1つとなっています。感染してしまった人の血を吸った蚊が、他の人の血を吸うことによって感染が広がっていきますから、まず予防の最も有効な措置としては蚊に刺されないように心がけることになります。そのため、感染に対しての対策として2つの考え方があり、まず蚊を発生させないこと、次に刺されないようにすること、が挙げられます。
まず蚊を発生させないことに関しては、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカの特徴を知ることからです。これらの蚊は人間が生活している環境を好んで選び、かつ少量の水からでも子孫を増やすことができる生命力の強い生き物です。そのためまずは生活環境の中で、水が溜まってしまう場所を確認してそれを無くしていくことが大切になります。コンドミニアムであればベランダの室外機周り、一軒家であれば庭周辺、また水回り、トイレ、シャワールームなども一度チェックして水が溜まらないようにしておくことが大切です。
次に蚊に刺されないようにする対策として衣類の工夫と殺虫剤があります。セブは暑いですが、できれば薄手の長袖、長ズボンなどを着用できるように準備をしておきましょう。特にタクシーを待っている時など、外で動かない状況になった際に蚊に刺されやすくなりますので気をつけて下さい。また殺虫剤はスーパーである程度の値段で購入することができます。フィリピンでは殺虫剤というとバイゴンというブランドが有名です。蚊だけでなく様々な害虫を駆除できるスプレーがあります。ただし、殺虫剤の効き目が強い一方で喉などに違和感を感じることもあるので、使うときは環境に注意しましょう。
それでもデング熱にかかってしまった場合、どういった症状が出るのか、またどう対処していけばいいのかについてご紹介します。自分がかかった病気の推移を知っていることで、治療中の精神的な支えにもなると思います。
1 熱が一度ひどく上がり、その後は1日の中で上下動を繰り返す
筆者がデング熱にかかった!と認識したのは受診をしてからです。なぜならこの病気は血液検査で血小板の数を測定することによって認定されることがほとんどで、自己診断でデング熱と判断することは難しくなっています。
まず今回症状に気づいたのは、一般的な風邪の症状を感じたことからでした。寒気などを感じ、熱がぐっと上がります。筆者は今回風邪と勘違いをして数日仕事をし続けていたのですが、徐々に上がる熱ではなく、ぐっと1日で熱が上がるようなら早めに受診することをおすすめします。ただし、あまりにも早い受診の場合には血小板の数値に大きな変動がまだ見られず、風邪と誤診されることもあるので、2日以上経って風邪薬を飲んでいても症状に変化がない場合は受診する、という程度が調度良いのではないかと思います。セブの病院では血液検査の結果血小板の数が15万を切った段階からデング熱、入院という判断になるそうです。今回最初に受診した際には血小板は16万ありましたが、次の日に再受診すると13万になってしまっており、入院することになりました。
デング熱を発症したと認められたころからは、特有の症状である熱の上下動が始まりました。例えば朝起きて37度程度になっており非常に体が楽でも、朝食を取って一寝入りして起きるともう熱が40度超えになっていたことも何度かありました。筆者の場合は37度前半から39度中盤で常に上下動が繰り返され、快方に向かっている段階でもこの動きはずっと続いていました。体力が奪われるため退院後も一定期間は貧血のような感覚に見舞われますから、車やバイクなどを運転する方は特に気をつけてくださいね。
2 入院環境は決して良くない
今回入院することになったのはマクタン島のマクタンドクターズホスピタルでしたが、結論から言うと入院環境は決して良いとは言えません。いつもは関わっていて楽しい陽気なセブの人たちですが、体調が悪い時にもアバウトな対応を取られるのは非常に苦痛です。日本では考えられませんが、ナース同士が大声で入院している個室で会話をし大笑いをしながら出ていき、ドアを閉め忘れたり夜中なのに電気を消し忘れたりするのは日常茶飯事、食事のメニューを聞かれて答えても全く違うものが出てきたり、食べてはいけないとドクターから言われている食べ物が平気で毎朝提供されたりと、病気であっても自分自身が意思表示をしてしっかり動いていかないと、ただベッドで寝ているという環境さえ守られることはありません。
また気になったのは衛生環境管理です。例えば入院時にはスプーンとフォークが一式渡されますが、それは交換してもらえません。洗剤などもないので数日は強くこすって洗ったり、タオルで拭いたりなどしていました。最終的に入院生活がある程度の日数になってきたのでどうしても交換して欲しいと頼みましたが、頼まなければ入院生活中は同じ道具で洗剤で洗えないまま使うことになっています。シーツの取り替えなども依頼して3日かかるなど、患者の立場になった時には不便なことがたくさんあります。ですから、まずは人目を気にせず、大げさなくらい予防を徹底してできるだけ入院することにならないようにしておくことをおすすめします。
3 症状と血小板の数値、輸血の判断
デング熱の症状自体は、熱の激しい上下動がかなりきつい一方で他の症状は目立ったものがありません。例えば咳やくしゃみなどの風邪に似た症状はなく、ひたすらに熱が体力を消耗させていくような、自分との戦いのような治療生活になります。一般的に言われているように水分をしっかり摂る、食べられるのであればできるだけ天敵だけでなく口からも摂取するようにするなどのことを心がけましょう。ただし入院でよく言われる「体力の低下を防ぐために歩くなど、体を動かすことを心がける」という点に関してはデング熱は厳しいと思います。実際に筆者も入院後2日間はできるだけ院内を歩いておこうと思っていたのですが、血小板の数値が下がってくると全身に力が入らず歩くことへの意欲がどんどん失われていきます。焦ってもかかってしまった病気は仕方ありませんから、しっかりと治すことに集中して退院後またゆっくり体力は回復させていくことをおすすめします。
前述の通りフィリピンでは、健康体であれば血小板は15万が最低の数値とされています。それを下回ってしまうのがデング熱ですが、筆者の場合では1万6千まで数値が下がってしまいました。これはある程度重篤なケースになります。数値が2万を切った段階で、治療の考え方として輸血という方法が出てきます。自分自身の治癒力だけでは回復が難しいと判断されるわけです。しかしながらこれも日本とは異なり、輸血をする血の安全性が気になります。実際にフィリピンで輸血を受けて肝炎になってしまったというケースを今回治療中に聞いたり、他の病気に関しても安全性に疑問符がつく部分があります。
マクタンドクターズホスピタルでは保存している血液を輸血する方法と、自分でドナーを見つけて病院に呼び、その方の血を病院内で取得し、更にそれをきれいにしてから患者に輸血する方法の2つが提示されました。しかし、特に現地に住んでいたり長期留学をしている方にとっては院内の保存血液を使わない判断をした場合ドナーはなかなか見つかりませんし、家族をセブまで呼ぶのも大変ですから、難しい判断を迫られることになります。筆者の場合は治癒力に賭けて一切の輸血を断りました。数値は19,000⇛16,000⇛16,400と、なんとか1万6千を下限として上向くことができたので、輸血はしないまま最終的に退院した形になりました。
4 退院後薬が合わなかったり、食事をしっかり摂っても症状が改善しないことがある
やっと退院できたと思っても、完治までには少し時間がかかるのがデング熱です。血小板の数値が15万に戻ってきた段階で退院の判断が下されますが、回復期にもデング熱特有の症状が見られることがあります。それは皮膚の色の変化です。皮膚のすぐ下にある毛細血管が切れてしまい、足や手などが一面に真っ赤になることがあります。筆者ももれなくこの症状が出たのですが、ある朝自分の足を見るといきなり真っ赤になっていてびっくりしたことを覚えています。しかしこの赤さは痛みを伴うものではなく、血管が切れているので少々熱かったり痒かったりすることはあっても我慢できる範囲のものだと思います。赤みは1週間〜2週間ほどで消えると言われているそうで、実際に筆者は10日程度かかってほとんど元の色に戻ってきました。
退院した後、これはデング熱に限ったことではないと思いますが体力の大きな低下を感じることになると思います。退院の次の日は2時間程仕事をしただけでとても大きな疲れを感じました。ただ、これも徐々に回復していくことなので気長に待ち、健康的な生活を続けていくしか方法がありません。また退院時に肌のための薬と、胃などに対する薬をもらったのですが、これが全く体に合わず逆に体調を崩して再受診することになってしまいました。再受診後もらったのはビタミン等の栄養剤で、筆者の場合はビタミンB1、B6 、B12が大きく不足してしまったためそれを補う栄養剤を処方されました。その後は上手く回復でき、現在に至っています。
今回ご紹介した治療や症状、体調の変動については筆者の実際の体験を元にご紹介しているため、個人差があることをご了承下さい。また、仮にデング熱治療において一般的に言われていない症状を紹介していたとしても、これは実際に筆者の体に起こったことをそのまま紹介しておりますので、いずれにしても1つのケースとして読んでい頂けますと幸いです。
デング熱は一度かかってしまうとある程度回復までに時間を要する他、体力も奪われてしまうためトータルで考えると1ヶ月程度全快までかかってくると思います。まずはかからないように、対策を考えて今日から実行してみてください!
(Taku)