フィリピンと言えば美しいビーチにこの国ならではの食べ物など、日本とは違う風景や味を求めて観光に来る方、またフィリピン人の英語の高い語学力やマンツーマン制度の魅力故に英語語学留学で訪れる方が多くいます。一方でフィリピン人の人柄や土地の魅力に惹かれてフィリピンで職を得る事を考えたり、既に実際に就労している方もいるでしょう。筆者もフィリピンとご縁があり就職した1人でもあります。
就職となると、就労ビザ取得など観光での滞在では必要のなかった様々な手続きするしなければなりません。フィリピンの福利厚生制度への加入もその1つなのですが、筆者も給与申請にあたって福利厚生制度に加入しました。今回はフィリピンで働く上で加入する必要のある福利厚生制度にはどんなものがあるのか、またその手順についてご紹介しましょう。
フィリピンで就職する際に加入が必要となる福利厚生制度は主なもので3つあります。それはSSS, Philhealth, Pag-ibigです。まずはこの3つについて簡単に見てみましょう。
SSS (Social Security System; フィリピン語ではPaseguruhan ng Kapanatagang Panlipunan)
SSSは公務員以外の一般企業や自営業を対象とした社会保障制度であり、退職後の年金、妊娠出産時、仕事上の事故による障害者、災害時の一時負担金など、様々な立場の人がその恩恵を受けることができます。またフィリピンで働く外国人もこの制度に一度申請して一定額収めるとフィリピンを離れて帰国した後でも、年金やその他の恩恵を受けることができます。
Philhealth (Philippine Health Insurance Corporation; フィリピン健康保険公社)
PhilHealthは医療保険です。病院外来の通院では適応されない場合が多いものの、一定期間求められる金額を納めた人が病院で受診や入院した際に支払金額が一定額を超えると適応され、負担額が一部のみに抑えることができます。
食習慣が欧米化されてきたフィリピンでは、生活習慣病などの疾患を持つ人が多くいます。筆者の会社でも以前、複数の同僚が家族や親戚、パートナーなどの大切な人が脳卒中で倒れるということが頻発した時期がありました。同僚はPhilhealthのお陰で家族の治療費を最低限に抑えることができたと、この保険制度に感謝していました。
HMDF (Home Mutual Development Fund; 通称Pag-ibig Fund)
Pag-ibig fundは主に住宅ローンの恩恵を受けることができる制度で、積立金を行うことで家を建てる際に積立金とローンを適応して給与から控除することが可能です。ローンは最長30年間に渡って最大300万ペソまでのローンを組むことができます。
それでは申請方法についてご説明しましょう。
SSS, PhilHealth, Pag-ibigそれぞれセブのメインオフィスがあり、また複数のブランチを構えています。対象手続きによってはメインオフィスでなければできないものもあります。特にメインオフィスでは窓口に人がごった返しているため、9時に開くオフィスの優先番号を取得するために朝6時から列に並ばなければならないようです。今回筆者はロビンソンフエンテ(ROBINSONS Fuente)にて申請することにしました。
ロビンソンフエンテに3階にSSS, PhilHealth, Pag-ibigの3つのオフィスがまとめてあります。複数の制度の申請や手続きをする必要がある場合には、ロビンソンフエンテであれば一度に手続きを済ませることができるのでお勧めです。Pag-ibigは残念ながら近日中にオープンするとのことで、今回はここで手続きをすることはできませんでした。ですがPag-ibigに限ってはオフィシャルサイトにて申請することが可能です。(http://www.pagibigfund.gov.ph)ロビンソンフエンテは朝10時に開店するため、これと同時にSSSとPhilhealthも営業受付を開始します。
ゲートがオープンすると同時に、これらの手続きに訪れた人々が足早に3階へと向かいます。SSS, PhilHealthそれぞれ手続きしたい窓口で優先番号を取得します。今回筆者は幸運にも、SSSは2番、PhilHealthは7番を取得することができました。
間もなくしてSSSとPhilHealthの順番が回ってきたので、窓口へ。申請用紙を渡され、記入する項目を伝えられました。
SSSとPhilHealthのどちらも、パスポートの原本1部とコピー1部を求められ、またSSSではAEP(Alien Employment Permit)カードのコピーも提出を求められました。パスポートのコピーは持参していたもののAEPのコピーは準備していなかったので、別の階にある店舗にてコピーをしました。
ロビンソンフエンテでは1階にあるカフェ”CAFE de FRANCE”内のインターネットカフェ、または2階にある雑貨店”Expressions”にてコピー機を有料で使用することが可能です。筆者は”CAFE de FRANCE”で3部印刷し、合計24ペソを支払いました。
受付で伝えられた項目を記入しますが、特に注意が必要なのは母親の姓は旧姓を記入しなければならない点です。パスポートのコピー下部にも、両親の姓名の記入を求められますが、こちらも母親は旧姓を記入しなければなりません。SSS申請用紙には右手の親指と人差指の拇印を押します。インクはSSSの窓口に置いてあるので、特に自分で持参する必要はありません。これらの申請用紙にはTIN (Tax Identification Number) を記入する欄があるので、TINを予め取得しておくと良いでしょう。
全ての項目を記入したら、窓口に戻り用紙を提出します。この時には優先番号を取得する必要はなく、真っ直ぐ窓口に行って構いません。用紙を窓口にて最終確認してもらい、問題がなければ申請完了です。申請が完了すると、SSS, PhilHealthどちらも用紙を渡されます。SSSに関してはフィリピンを離れて日本に帰国した後でも将来年金やその他の手当てを受け取ることが可能だそうなので、原本を大切に保管しておく必要があります。朝の開店と同時に優先番号を取得すれば、約1時間半で全ての申請が終了しました。
またPhilHealthはPhilHealthカードをその場で発行されます。カードにパスポートと同じ署名を記入し1インチ×1インチの証明写真を貼った上で、National Book Storeなどでラミネート加工(150Php)を施して貰えば、パスポートを持ち歩かなくともフィリピン政府発行のIDとして使用することも可能です。
フィリピンでは政府のシステムが頻繁に変更され、政府のウェブサイトなどオンラインで変更を確認することが難しいことも多いので、申請前には必要なものなどをそれぞれの機関に電話で確認することをお勧めします。フィリピンでは政府の手続きに時間や労力ががかかることも多いですが、上記の内容を参考にしてみてください。
(SHIORI)