筆者は現在、休暇で日本に一時帰国しています。1週間という短い間ですが、セブに7ヶ月住んだ後に帰国すると様々なことを感じます。宗教、食、交通など、2つの国で異なることはたくさんあると思いますが、その中でも大きく異なってる3つのことについてご紹介したいと思います。
1,子どもの教育と地域社会の関係
日本では現在、首都圏を中心に待機児童の問題が広がっています。
待機児童とは保育園や幼稚園などの許容人数に対して子どもの数が上回ってることにより、通いたくても通えない子どもたちのことを一般に指します。
日本はこれまで、先進国の中で最も女性が社会進出し辛い国の一つでした。しかし男女雇用機会均等法などの成立により、女性の社会進出が促進されています。ただ現在も先進国内で比較するとその進出率は低く、より一層の改善が望まれるところです。このような社会の変容の中で、幼稚園や保育園の需要は高まり、それに対しての供給となる保育園や幼稚園などの許容人数が不足しています。
このような場合日本では、無認可の保育園などに子どもを預けて仕事に行く場合や、子どもを残して行ってしまうケースもあります。特に大人の目に触れない場所で長時間過ごすことになる子どもたちは、安全面のみならず教育の面でも、保育園などに通っている子どもと比較すると遅れを取ってしまうという意見もあるそうです。
日本ではまた核家族化が進んでおり、兄弟で子守りをすることができない家庭が増えている他、地域の人々の関係の薄れから、隣の家の人と関わることが滅多にないケースも珍しくありません。
このような日本の環境と比較すると、子どもたちにとってフィリピンはとてもよい環境と言えるかもしれません。
出生率が極めて高く人口比率でも若年化が進んでいるフィリピンでは、子どもたちを地域ぐるみ、親戚ぐるみでサポートしていくことは極めて一般的なことです。
筆者が務めるマクタン島のオフィスの前にもたくさんの子どもたちが元気よく遊んでいますが、子守りをしているのは10代~60代までも幅広い年齢層に渡り、彼らは必ずしも家族というわけではありません。
地域の中で子どもたちを育て、預かる機能が自然と備わっているため、父親や母親は仕事に安心していくことができます。
両親を待っている子どもたちはもちろん多くの時間を遊びに費やしていますが、1人で過ごすことは非常に少なく、常に同年代の友達や預り手の大人たちと会話をしたり、時には教科書を広げて言語を学んだり、はたまたサリサリストア(小さなコンビニのようなもの)の手伝いをして、お客さんからお金を受け取ってお釣りを返すこともあります。
小さな頃からこのような経験をしていることは、子どもたちにとってとてもいい経験になるのではないでしょうか。
フィリピンの方々が地域や社会に溶け込むことが得意であることは、彼らが多くの国に渡り仕事をしていることからも伺えます。持ち前の明るさとアバウトさも、このような経験から生まれているのかもしれませんね。
2,時間の使い方
日本では電車やバスが数分遅れるだけで遅延証明書が発券されます。
これは社会の常識として、時間はきっちり守ることが大事とされているからですが、生まれた頃から日本の時間感覚で成長していると、それは至って普通ですよね。
学校ではチャイムが鳴った後に教室に入れば遅刻ですし、時刻表の時間より1分遅れれば間違いなく電車は発車しています。筆者は今回、成田に到着してシャトルバスを使ったのですが、14時15分ピッタリに滑りこむバスに改めて感動しました。
このような文化が根付いている日本では、物事がほとんど予定通りに進行していきます。そのためビジネスであっても、私生活であっても、「遅れる」ということで困ることはあまりないかもしれません。
そういった環境で育ってきた日本人がフィリピンで勤務する際には、少しイライラしてしまう場面もあるかもしれません。時間通りに自分が動いていても、相手が同じように時間に対して厳しくなければ物事はどんどんと遅れてしまいます。筆者が働くオフィスでも、稀にそういったことを感じることはあります。
一概にフィリピンの人々が時間にルーズというわけではありませんが、どんなことを大切と考えるか、英語でいう「Priority」の部分で文化の差が感じられます。
3,ゴミに対する意識
仮にゴミの回収日のような状態が道全体に広がっていたら、日本の人たちはどういった行動に出るでしょうか。
私の生まれた街では、朝早くから家の前を掃除している人たちをたくさん見かけます。歩きタバコをひょいっと捨てた人を見て嫌悪感を感じたり、ゴミを持っていたらゴミ箱を探す感情が生まれる人が多いかと思います。
セブでは近年ゴミの回収が始まり、一部では分別を行う場所も出てきました。
分別に関しては数年前からということです。
しかし道端にゴミが全く落ちていない道は、ほとんど見かけることはないと思います。吸い殻やお菓子の袋などが道に落ちているのは至って普通です。これはフィリピンに限らず、筆者がこれまで渡航したモロッコなどでも見られた光景です。
ゴミを道に捨てるか、ゴミ箱に捨てるかの違いは、これも文化や教育に起因しているかもしれません。セブの子どもたちはお菓子を買うと、その場で開けてポイポイっとゴミを捨てて元気に走っていきます。筆者のオフィスの前の子どもたちも、いつもそうしています。
子守りをしている人たちは、特にそれを咎めたりはしませんが、夕方になると掃除をしているようです。日本であれば、恐らく両親や周りにいる大人がその場で注意することが多いですね。
文化や教育、感覚の違いについてある社会学者はこんなことを言っています。
「人の性格や行為は、その人が育った環境・経験・価値観に全て起因するものである。」
違い自体は、どちらが正しいというわけではないと思います。
様々な文化の中で、たくさんの人々が異なる考えを持っていることはとても面白いことではないでしょうか。
他にも様々な違いがあると思います。
また日本とフィリピン、良い所も悪いところもそれぞれありますね。
お互いの国をもっともっとよく知ることで、良い所を共有していければいいですね!
(Photo via http://portal.nifty.com/2009/08/24/a/ and http://travel.biglobe.ne.jp/tguide/kuchikomi/2725e828f5.html)
(タク)